ビール |
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行き帰りの飛行機の中でも、行きがけのフランクフルト空港でも、ビールは「ヴァルシュタイナー」(Warsteiner)だった。「ベックス」(Beck's)と並び称されるドイツ・ビールというが、ぼくは記憶にない。初めてではなかろうが、特別の興味を持たなかったのだろう。
スロヴェニアでは「ユニオン」(Union)、クロアチアでは「オジュイスコ」(Ozujsko)と「カルロヴァチュコ」(Karlovacko)。
S添乗員はオジュイスコを薦める。残念ながらぼくにはどれも同じ味がした。日本のよりコクがあるように感じたが……、旅先のは全てピルスナーなのかなあ。日本のはほぼラガー、あっさりしている。最近は発泡酒党だから、一人前なことは言えないが。
値段はどこもミネラルウォーター並みで、ジュースより安かった。昼間のアルコールは控えているが、この旅ではビールに限って解禁した。 |
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ナイトキャップは、成田空港でバランタイン12年の小瓶を買い、チビリチビリやった。道中、立ち寄った売店で求めた小缶のオジュイスコも飲んだ。持参のするめとピーナツをつまみに。 |
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iPodを聴きながら |
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5年前英国を旅行し、エディンバラから北のネス湖を往復してスコットランドを回ったとき、ぼくのiPodはメンデルスゾーンの交響曲第3番(スコットランド)を奏でていた。「フィンガルの洞窟」も。
いま、旧ユーゴスラヴィアに属したスロヴェニア、クロアチア、モンテネグロ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナの幾つかの町と名勝を巡っている。
ここでお恥ずかしい話だが。
これらの国々の作曲家はおろか、有名芸術家を一人も知らないのは、一重にぼく個人の問題であることは言うまでもない。
ただヨーロッパのクラシック音楽を愛する一人として、この地に身を置いているときは、その風土を呼吸した作曲家の音楽を聴きたい。残念ながらぼくの120ギガバイトiPodには、旧ユーゴスラヴィアの作曲家は一人もいない。きびすを接する周辺諸国には数多くいるというのに。ロシア、ドイツ、オーストリア、イタリア、ハンガリー、チェコ……。
待てよ。一瞬自分に首を傾げて、書棚から世界地図帳を取り出した。 |
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周遊した4ヶ国のところを開くとモンテネグロがない。まだユーゴスラヴィアという国に属しているようだ。コソボもセルビアも。道理で、地図帳は1999年の発行だった。手もとにこれしかないから、やむを得ない。
で、ぼくが愛聴している作曲家たちの国々はどの辺にあたるのだろう? 世界全体のところの両開きを広げる。
ページ左側に位置する一角、それもヨーロッパの一部といっていい。予想と大きくかけ離れているわけではないが、思いを新たにした。
シベリウスやグリーグ、ニールセンの北欧は当然はいる。イギリスから東へ、いわゆる西欧諸国。その東ではオーストリア、ハンガリー、チェコ、それにロシア。
大ざっぱに言って、同じヨーロッパでもバルカン半島の首根っこ部分から下に向かって全ての国の作曲家を知らない。ロシアの南にあたる国々についても。アメリカはともかく、他の大陸は推して知るべしだ。ブラジルのヴィラ・ロボスだけ2曲あった。 |
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それ以上に「クラシック音楽」が広がらないのはぼくの知識不足によるものだが、地理的状況・民族・宗教……諸事情も絡んでいるのだろう。いずれにしても、ぼくが「クラシック音楽」という場合、この限定された地域の作曲家たちの音楽を語っている。
そこで「民謡」だ。サンサーンスのピアノ協奏曲に「エジプト風」があり、トルコや昔のペルシャ、インド、アジアの国々、他の大陸の民謡の数々が、いわゆる「クラシック音楽」に取り入れられてはいる。
日本でだってそうだ。アイヌ民族の民謡がいかに多く「日本のメロディ」に顔を出すことか。奄美民謡、琉球民謡も。 |
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限られた地域以外の国々では「クラシック」的な作曲家はいないのだろうか。愚問はよそう。ぼくが知り得ていないことと、彼らがまだ世界に飛躍していないか、世界の注目を集めるところまで来ていない……超えがたいハンデを想像する。
ではこれからぼくの音楽鑑賞志向は?
ベートーヴェン、モーツアルト、シューベルトだけでも、一生かかっても彼らの音楽を楽しみきれないだろう。ほかに、マーラー、ブルックナー、ショパン、ドビュッシー、リスト、ショスタコーヴィッチ……。身動きがとれない。
当分現行不一致に甘んじることにする。 |
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戦争と平和 |
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クロアチア・プリトヴィッツェ湖群国立公園をハイキングした日だった(10月9日)。「ノーベル平和賞に米国大統領バラク・オバマ氏がノミネート」の報道が世界を駆けめぐり、クロアチアの一隅でも、テレビ画面で直ちに目にした。
翌日オバマ氏の受諾声明があり、次いで各国有力者の賛否両論が報じられた。正直ぼくは「大変な決断で、重い十字架を背負ったのではないか」と感じた。
そうしたニュースの合間にも、アフガン、パキスタン、イラクでテロやら紛争の犠牲者が続出している。「鳩山首相がソウルで韓国大統領、翌日は中国主席と、北朝鮮問題で話しあう」が短く報じられたのもその前後だった。 |
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芳香に吸いよせられて蜂の群れ
これはぼくの俳句もどき。
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スロヴェニア・ポストイナ鍾乳洞入口の露店で蜂蜜を売っていた。松の蜂蜜まである。売り子の女性は無理やり売ろうとしない。それとなく試飲というか試食というかを勧め、片言の質問に片言で真剣に答える。ぼくたちは菩提樹のを買った。
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偉大なる自然景観、歴史遺産、根っから友好的な人々。数年を待たず、世界から観光客が続々と押しかけることになるだろう。ただし平和が維持されてという条件つきだが。
どの町でもひょいと現れる戦乱の傷跡。崩れた建物、にわか修理、新設中、壁の弾痕群。さわやか・のどかな景色がここでは泣いている。「命も幸せも文化も何もかも奪い去った」と。
60数年前の広島・長崎を忘れたわけではないが、平和の尊さがぼくたちの血肉をなしているだろうか。当然の環境と思いこんでしまっているのではないだろうか。
戦乱やらで幸せを得たのはどこか? だれが勝利したのか? 民族・宗教・思想・覇権……、戦乱は人類の業(ごう)なのだろうか?
平安をもたらすために生まれた宗教が、宗教同士で争って、人類を破滅に追いやろうとしている。
救いがたきは人類の性根よ。どうして私はこんなものたちを作ってしまったのだろう。そう嘆いている神様を錦の御旗にして、人類は千尋の谷底へわれ先に転げ落ちている。……黒澤明監督の映画「乱」と「蜘蛛の巣城」を思い出した。 |
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度重なる戦乱は、無数の住民の命とともに風土をメチャメチャにして、そこに根付いていた文化や芸術までも払拭してしまった……。そんな思いをさせられる旅でもあった。
ドブロヴニクで各種コンサートの掲示を見、芸術のそよ風を感じとってうれしくなった。 |
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文化は平和でなければ育たないと断言するほど自信はないが、一旦破壊された芸術が短期間で蘇生するとも思えない。
地中海気候の青空は涙をたたえているようにも見えた。 |
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ちょっとした現地のあいさつ言葉 |
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6年前の秋、今回と同じように、東欧4ヶ国の点景を巡った。ベルリン、ウィーンはともかく、チェコのプラハとチェスキー・クルムロフ、ハンガリーのブダペストに立ち寄ったとき、ちょっとした現地言葉で話しかけていい思いをした。その時の感想をこう書いてある。
「現地の言葉で話しあえたら……これは所詮かなわぬ夢だが、にわか仕込みのあいさつ用語が案外役に立った。それこそあいさつ程度だが、重宝した。」(雑記帳第35話Part5「アラカルト」) |
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今回も同様にあいさつ言葉が役立ってくれた。
「おはよう」「こんにちは」「ありがとう」程度だが、慣れるとひとりでに口を突いて出るようになる。それをきっかけに話が弾めばそれに越したことはないが、あとは笑顔の交換だけ。ただし、写真を撮らせていただくことには大いに寄与した。どなたも例外なくにこやかに応じてくれた。 |
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その他の出会いスナップ写真 |
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今後何らかの機会に役立ちそうなのを拾い書きしておく。 |
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スロヴェニア語 |
クロアチア語 |
おはよう |
ドブレーラーノ |
ドブロユートロ |
こんにちは |
ドーブルダン |
ドバルダン |
こんばんは |
ドブリーヴェチェル |
ドブロヴェーチェ |
おやすみ |
ラフコノチ |
ラクノチ |
やあ/じゃあね |
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ボーク/チャオ |
ありがとう |
フヴァーラ |
フヴァラ |
いいえ、結構です |
ニエジャクイエム |
ネ・フヴァラ |
どういたしまして
すみませんが |
プロシーム |
モーリム |
ごめんなさい |
プレパーチテ |
オプロスティ
パルドン |
さようなら |
ナスヴィデニェ |
ドヴィジェーニャ |
はい/いいえ |
アーノ/ニエ |
ダ/ネ |
はじめまして |
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ドラゴミイェ |
いくらですか? |
コリコスタネ? |
コリコストイ? |
これをください |
ダイテミト |
ダイテミオヴォ |
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4ヶ国の概要 |
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10日間、駆け足の旅だった。一応バルカン半島の4ヶ国を見て回ったということにして、少なくともその点景を楽しませてもらった。
ヨーロッパ南東部にあるこの半島は、東に黒海とエーゲ海、南に地中海、西はアドリア海とイオニア海に臨んでいる。北はドナウ川とサバ川を境にしている。
4ヶ国以外に半島を構成する国は、マケドニア、セルビア、アルバニア、ギリシャ、ルーマニア、ブルガリア、そしてマルマラ海の北に位置するトルコだ。
4ヶ国とマケドニア、セルビアは、1991年以前は旧ユーゴスラヴィアに属していた。世に知られた紛争の拠点だ。目にした各地の景観だけでも、いまだ生々しい惨状を残している。
そんな各国の現状をぼくなりにまとめたのが下表だ。備忘録として残すことにした。 「地球の歩き方(ダイヤモンド社)」を参考 |
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