這い込むと泥棒というむごいやつ |
忍び込んだことに気づいているくせに黙っていて、いざとなると、「泥棒!」と叫ぶ残忍な女性。 |
馬喰町五百のあすが四十七 |
旅客は、本所の五百羅漢参詣の翌日は、高輪泉岳寺の四十七士の墓参と見物を楽しんだ。 |
葉桜は捨てものにする仲の町 |
盛りすぎた年増の末路 |
初めては親父がはずす朝帰り |
息子の初めての朝帰りに、わが身の若き日を思い起こし、息子も気まずかろうと対決を避ける、人情の機微を知った苦労人の父親 |
恥ずかしさ知って女の苦のはじめ |
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果たし状泣くな泣くなと墨をすり |
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八文字あれはこの世のものでなし |
上級遊女による華麗な外八文字の歩き方はむずかしいものであった。歩き出すときに、爪先を内側へ向けて、それから外へ爪先を開いて、しずしずと歩を進めるというスタイルだったが、黒塗りで、畳付きの下駄は、5、6寸という高さだったから歩くのも容易では・・・ |
咄家は世間のあらで飯を食い |
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鼻と尻利口と馬鹿の抜け所 |
「目から鼻へ抜ける」のは利口、何でもすぐに忘れてしまう「尻から抜ける」のは馬鹿 |
花に背を向けて団子を食っている |
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花の山抜いた抜いたが嵐なり |
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花の山幕のふくれるたびに散り |
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鼻は小さいがと新造泣いて下り |
鼻が大きい男は、モチモノは巨大だと言うが、鼻が小さいのに大物だったとは・・・若い遊女泣かせの「看板に偽りあり」 |
鼻持ちのならぬ所で封を切り |
文を読む秘密の場として、手洗い所は絶好なのだが ・・・ああ、臭い仲 |
母親は息子の嘘を足してやり |
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母親もともにやつれる物思い |
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母の手をにぎってこたつしまわれる |
こたつは間違いのもとという親心 |
流行(はやり)医者一人殺すと二人増え |
流行医者でも患者を死なせることがあるが、それでも患者が増えるから、人気とは奇妙なもの |
腹立って出る傘(からかさ)は開きすぎ |
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腹の立つ晩真ん中へ子を寝かし |
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腹の立つ火箸は灰へ深く入り |
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腹の立つ裾へかけるも女房なり |
夜遅く迄寝ずに待っていたところへ、ようやく帰ってきた亭主が、ごろりと寝てしまった。ただ飲んだくれていたのか、浮気をしていたのか、わからないが、なんとも憎らしい。しかし、長いこと連れ添った仲だから、風邪でもひいては・・・。 |
腹の虫遠吠えをする居候 |
慢性飢餓症故の悲しい遠吠え |
はらんでもいいと橋から連れて来る |
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引けるまで惚れ残されるつらいこと |
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ひそひそと繁昌をする出合茶屋 |
忍ばずという池の名に反して、忍び逢いの二人で繁昌する密会用の出合茶屋 |
人同じからず持参と支度金 |
美、醜によって、持参金付きで貰って頂く嫁あり、支度金を取って来てやる嫁ありと、さまざま。「年々歳々花相似たり、歳々年々人じからず」(唐詩選)による句 |
人さまが来ると継子を目へ入れる |
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人は武士なぜ傾城にいやがられ |
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ひとり者家へかへればうなり出し |
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人を殺して世を渡る女医者 |
女医者とは、婦人科医の事だが、その仕事の多くは、堕胎だった。婦人科医(堕胎医)のことを中条流ともいった。 |
冷水を飲んで息子に叱られる |
老人客が、「年寄りの冷や水」という陰口も無視して新造をあげるのは、若い女性を相手にすることで若返ろうとする魂胆でもあった。 |
ひょろひょろと断食堂の昼鼠 |
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昼帰り親父あきれて物言わず |
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昼見れば夜這い律儀な男なり |
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拾わるる親は闇から手を合わせ |
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封違い不機嫌な客二人出来 |
宛名違いでは、二人の客を失う悲劇 |
仏師屋をしても弘法食えるなり |
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懐をやたらに探すさめた奴 |
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舟宿へうちの律儀を脱いで行き |
柳橋や山谷堀の舟宿に預けてある遊び着に着替えて吉原へ・・・まじめな商人が、道楽者に変貌する、みごとな早変わり。 |
振られたと亭主せつない申し訳け |
「夕べは振られて、何もなかったよ」とは、苦しい言い訳 |
ふんどしを故郷へ飾る角力(すもう)取り |
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屁をひって嫁は雪隠出にくがり |
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ほうばると何も言われぬのは小判 |
他言無用の妙薬は小判 |
北国(ほっこく)は行くほど寒くなるところ |
北国=吉原 |
惚れたとは女のやぶれかぶれなり |
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ほれ所に困り気性にほれんした |
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本能寺端の歩をつく暇はなし |
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本降りになって出て行く雨宿り |
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本惚れと見抜いて夜具をねだる也 |
吉原では、自宅の夜具と比較にならぬほど豪華ものを使い、しかも馴染み客が遊女に贈る習慣だったから、客の負担は大きかった。 |