振りかえる Looking Back
2000年(平成12年)は還暦の年だった。
それを機に会社の第一線を退いた。といっても本件、その後ちょっかいを出して痛い後味を悔やんでいる。
翌年の大半は、80歳を幾つか超えた大学先輩たちのホームページ制作をお手伝いして過ぎた。年末の公開を目指して、昼夜兼行の作業が連日続いた。
その結果、気力・体力とも消耗して、枯れ草に火がついたように旅行がしたくなった。妻を無理やり説得して、年末に四国、2002年初めに沖縄を巡った。
そして同年3月、観光目的では初めての海外旅行を思い立った。「中国6日間」。上海、蘇州、西安、北京の歴史遺産をめぐった。
帰って旅日記を書く意欲が出てきた。2年前まで山歩きで書いた紀行文をまねて、旅をつづってみた。これが旅行紀行文の第一作となる。
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大雁塔 (西安) |
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万里の長城 (北京郊外) |
以来19回の海外旅行をして、昨年(2012年)8月の「上海と江南地方8日間」が紀行文14作目となる(すべて「雑記帳」に収録)。ということは残りの5回を紀行文にしていないということだ。
イタリア9日間(2002年)、ホノルル10日間(2004年)、スペイン・ポルトガル10日間(2005年)、ハワイ島・オアフ島6日間(2005年)、ベトナム・カンボジア8日間(2005年)。
それぞれに書かなかった、書けなかった理由はあるが、今となっては惜しい。が、各旅行について、「某日@某所」に収めてある数々の写真を見ても、本人があきれるほど記憶は薄れている。……開き直って真偽わからぬまま、書き殴ってみようか。
「スペイン・ポルトガル10日間」を手始めに、回想というよりも幻想だのみで試みることにした。「回想・イベリア半島2005」のタイトルで。
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2013年3月のいま、73歳を2ヶ月後に控え、8年前の誕生日に妻とスペインのどこやらを巡っていたのを懐かしく思い出す。夕食のテーブルでは、ツアー主催のトラピックスから牡牛をイラストしたTシャツのプレゼントをいただいた。再度感謝。
2005年5月8日から17日まで10日間。スペイン・バルセロナを起点として、ポルトガル・リスボンまで、イベリア半島の南半分を、地中海と大平原を交互に見ながら横断したのだった。添乗員Yさんの案内で、ぼくたち二人を含む総勢29人を乗せた大型バスは、正味7日間で2500`走った。
目まぐるしい旅だったが、内容と感動の濃さはいうまでもない。そのためか、写真集は仕上げたが、紀行文までには至っていない。
紀行文挫折、もう一つの理由は、半年前から書き進めていた小説のせいだ。旅の間、片時も忘れることはなかった。旅行から帰った直後に原稿を書き上げ、それから推敲を重ねて、9月に筆を置いたのだった。「怪獣の棲む講堂物語」として、この「雑記帳」に載せてある。
さあ、8年前にタイムスリップして、ヨーロッパの南端、イベリア半島へ出発だ。
スペインよ、ブエノスディアス(Buenos dias)! ポルトガルよ、ボアタルデ(Boa tarde)! ……こんにちは!
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2005年に遡(さかのぼ)る Back to the Year 2005
5月8日(日)朝10時30分、エアフランス機で成田を発って、同日夜7時30分(現地時間)、スペイン・バルセロナ空港着。日本との時差は8時間だから、パリでの乗り換え時間を含めて17時間かかったことになる。
空港待機の大型バスで、43`南西のシッチェス(Sitges)という町へ。地中海に臨むリゾート地だ。海岸沿いのホテル・アンテマーレ(Antemare)に着いて、ようやっとベッドにもぐり込んた。
翌朝は朝食前に外に出て、地中海の潮の香たっぷりの空気を吸い込んだ。
ホテルを9時に出発する。すんだ青空、さらに青を色濃くしたのどかな海、さざ波の乾いた音、そんなぜいたくな景観に見送られて。
シッチェスという町。一宿一飯だけでサヨナラするような町ではなかったようだ。バルセロナの高級別荘地で芸術の町≠ニ、「地球の歩き方」(ダイヤモンド社)はいう。海水浴の人々で賑わうビーチは予想通りだろうが、3つの美術館がまた、それぞれの特徴を有して、優れものという。メモしておく。
カウ・フェラット美術館 (Museu Cau Ferrat)
マリセル美術館 (Museu Maricel)
ロマンティック美術館 (Museu Romantico)
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バスは45人乗りの大型新車で、運転手は二人。交互で安全運転を心がけている。乗客はというと、添乗員のYさんを含めて30人。道中をとおしてゆったりは約束されている。空いた席は代わる代わる有効利用できそうだ。
Y添乗員のアナウンスに耳を傾けているうちに、30分ほどでバスはバルセロナの市街に入っている。
いよいよアントニ・ガウディの傑作にお目にかかれるのだ。詳細は次章にゆずる。
参考までに、トラピックス作成の日程表をあげておく。初日の8日は予定どおりに進行した。
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