1.塚越屋七兵衛と女将さん
「塚越屋七兵衛」、群馬県伊香保温泉の老舗温泉宿で、その名は、江戸末期・文久3年創業の屋号という。今年が157年目。大正の頃か、画家竹久夢二の定宿でもあったよし。
別館の香雲館を含めて、「いいね」「まあね」「……」等、インターネットに情報満載。1泊しただけで、まだ十分肌身で味わったと言えない当方、これ以上の紹介はそちらにおまかせする。
その女将が塚越左知子さま。
渋川市は、2016年10月に粋な計らいをなした。曰く、「市民ファーストの精神に則り、宝と認定する人物を市民の中から選出し、栄えある人間市宝の称号を贈ります」。
その第5号が塚越屋七兵衛の七代目女将である彼女。大正年間に総理大臣を務めた高橋是清のひ孫とは恐れ多いが、それはともかく、元旦から1泊の滞在で垣間見た限りでは気さくこの上ない。背景で引き立つようなお人ではなかった。
が、ここに渋川ドットテレビのパンフレット「シブタブ」がある(2018年9月、vol. 14)。人間市宝第5号としての彼女の特集だ。題して、「人は自分自身の力で幸せになれる。……日本一幸せな宿づくりをめざす女将の波瀾万丈半世紀」。
一部抜き書きする。
1967年1月、当地の生まれ。東京の中高一貫校へ進学。
字幕翻訳者で翻訳家の戸田奈津子氏にあこがれ、津田塾英語専攻科に進学。卒業後、さらに翻訳専門学校に通う。
その学業を生かして東京放送に秘書として入社。スポーツ放送局長の秘書を務める。
電通にスカウトされ、広告代理店でクリエイティブディレクターのデスクワークを3年半こなす。
1994年に母が別館の「香雲館」を建て、それを手伝うため帰郷。但しこちらの現実は仰天の火の車。膨大な借金でどん詰まりだった。オーストラリアで勉学中の弟を呼び寄せ、母と3人で死の苦闘となる。そうしたときの2004年、「伊香保温泉の三重苦」事件。温泉偽装問題、浅間山噴火、中越地震。とどめが2008年のリーマンショック。銀行から「塚越さんへの支援はムリ。倒産するか、売るか、どちらかを」。
何の突破口も見いだせない、そんなときに知り合った弁護士の言葉、「あなたの守りたいものは何ですか?」
捨てるもの、あきらめるもので頭一杯の彼女の胸にぐいと突き刺さった。……それは社員、取引先、お客様。
塚越屋が150年の歴史を刻んで来れたのは、人が元気になれる旅館であり続けたから。
「苦しみがあったからこそ今がありますし、借金があったから生き方がわかりました。人は幸せになるために生まれてきたのですから、自分自身の力で人は幸せになれる、との思いです」
渋川ドットテレビ《人間市宝》
http:// shibukawa.tv/ningen05
2.蛇足の1 年末エッセイに共感ありや
昨年の旅行は、5月に新潟県弥彦村3日間、7月に東北バス旅行4日間、そして10月末に富山県黒部・魚津4日間、それだけだった。海外旅行は及ぶべくもなし。
そのせいもあり、いまや生きがいの物書きもスローダウン歴然。10年ほど前までに書いた小説4篇の(最後の?)見直しに明け暮れた。あとは上記小旅行の紀行文と次のエッセイ2つ。年初の「2018年、年明けて」と、暮れにかけての「78才、半年過ぎて」。
数年前にフェイスブックを退会し、それを機にエッセイ・紀行文等の自己宣伝を止めていたが、暮れのエッセイは、お迎え間近との思いも頭をかすめて少し力んだ分、久しぶりに欲がもたげ、外人にも読んでほしいと我流英訳まで加えて、心当たりに一斉同報したのだった。
20人ほどから「読んだよ」の返事があり、気を良くしている。ずっこけと挫折だらけの告白エッセイを、面白がってくれた人もいたようだ。
3.蛇足の2 干支の十二支
干支は、日常生活のいろいろな面に現れる。運勢、方角、年齢、性格、……、歴史上の事件にも現れる。戊辰戦争、壬申の乱、辛亥革命、……〝甲子園〟は事件ではないが。
今年は猪の年。甲乙丙丁の十干はさておき、十二支について思いつくまま。といっても「猫年はなぜないのか?」、それだけなのだが。
ぼくの年代で十二支を諳んじられない人は少なかろう。それぞれが意味する動物名も。念のため下記のとおり。
十二支 |
読み |
動物名 |
子 |
ね |
鼠 |
丑 |
うし |
牛 |
寅 |
とら |
虎 |
卯 |
う |
兎 |
辰 |
たつ |
龍 |
巳 |
み |
蛇 |
午 |
うま |
馬 |
未 |
ひつじ |
羊 |
申 |
さる |
猿 |
酉 |
とり |
鶏 |
戌 |
いぬ |
犬 |
亥 |
い |
猪 |
動物、鳥、食用、ペット、はては神話の生き物たる龍まで。身近な動物が多い中で、なぜ猫がないのだろう? こんな疑問に脳が侵されるのはぼくだけかな? と思いきや、グーグルで調べると、いろいろ出てきた。ご興味ある方は、確かめられたし。「そんな事どうでもいいではないか」の方は、お目こぼしを。
ともあれ猪の今年、「あんたは豚の方がお似合い」と言われる体形だが、意義深い年でありたい気持ちはまだ人並みにある。
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