1. 入院まで 4. あれこれ
2. 病院の10日間 5. 「歎異抄をひらく」朗読
3. 退屈しのぎ
3.退屈しのぎ

 入院中の退屈しのぎはまずテレビ、と言いたいところだが、最近はなるたけテレビを見ないようにしている。目の衰えもさりながら、見る聞く両方とも奪われて、その間画面にいわば金縛り。
 自宅では、ニュース関連は見るが、ドラマやバラエティ番組とは無縁。「晴天を衝け!」だけは欠かさず録画して、好きな時に見ている。

 今回の持参は携帯ラジオとスマホ、それに本3冊。

1.携帯ラジオ

 手の平半分サイズの携帯ラジオは、日中の手持無沙汰な時や寝床の友。とくに手術後3日間は体が不自由、その間気分をほぐしてくれた。
 NHK第1で流れる音声を気軽に聞き流し、飽きたらスイッチを切る。嫌味ならず、自在に活用できた。
 「ひるのいこい」、陽気な対談、童謡、「深夜便」、……。

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2.スマホ

 スマホは思った以上に役に立った。
 妻との交信に欠かせなかったが、もう一つ、自身のだみ声とこれほど親しくしたことはこれまでにない。便利になったもので、いまのスマホは全国どこへ行っても大概のところでインターネットにつながるという。
 いつものぼくは、一人でウォーキングするとき、よく携帯して、AFTERSHOKZという耳掛け型骨伝導ワイヤレスヘッドホンで聴いている。これだと周囲の音も同時に聞こえるから安全だ。
 ここは一人部屋だからヘッドホンの助けはいらない。好きなとき何時間でも。寝床では、携帯ラジオ同様に、枕元に置いてチャンと聴ける。

 前章で触れたように、雑記帳と小話集のエッセイ、紀行文、小説のところどころを興味に任せて選ぶ。
 ウェブサイトの「中高年の元気!」は、手前みそだが、何せ20年以上も前からの作品群に彩られ、その大半が自らの英訳付き。その両方の朗読だから、大容量。近年プロバイダーとのサイト容量大幅増を契約した結果、総計450時間ほどの朗読をそこにアップしてある。それらを病室で安気に聴けるのだ。事実、大いなる助っ人役を果たしてくれた。

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3.書籍

 3冊持参した。
 「歎異抄(たんにしょう)をひらく」(高森顕徹著、1万年堂出版)、「いま生きている英語」(飛田茂雄著、中公新書)、それに元首相小泉純一郎氏著の「音楽遍歴」(日経プレミアシリーズ)。

 〝無人島へ持っていく1冊なら〟の司馬遼太郎ではないが、まずはこの「歎異抄をひらく」を選んだ。
 〝善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや〟。原書にあるという、道理を逆手に取ったこの言い回しに馴染みはあるが、まだ目を通していない。たまたま妻がそれを易しく解説した(という)本書をもっていたので、借りることにした。
 親鸞聖人の高弟・唯円によって書かれたもので、随所に聖人の言葉を借りて、現状の誤った認識を正そうとした、そこまでは承知。第1章「仏法の肝要、を言われた親鸞聖人のお言葉」、第2章「親鸞聖人の鮮明不動の信念」まで読み進んだが、少々窮屈な気になって、挫折。

 「いま生きている英語」は途中まで読んでおり、病院で続きをと携えた。があまり気が乗らず、手つかず仕舞い。

 ということで、新書版の「音楽遍歴」をめくる。
 著者の小泉純一郎氏といえば、「変人」で多芸多才はひと頃音に聞こえた。バイオリンを奏で、音楽はクラシックからロックまで、幅広く愛好。スポーツでご本人の力量は知らないが、大相撲、プロ野球、サッカー等のセレモニーによく姿を見せたこと、テレビで何度も見たような気がする。
 この本、いつだったか、ブックオフで買っていたようだ。105円の値札が貼られている。なんとなく書棚から選んで病院へ持参したのだった。読みはじめる。
 失礼ながら案に相違して、内容に共感を覚えて引き込まれ、手術をはさんで数日間、感服しながら読み終えた。

 3章構成で、こんな具合。
 Ⅰ クラシックとの出会い
 Ⅱ オペラは愛である
 Ⅲ エルヴィス、モリコーネ、そして遍歴の騎士

 ⅡとⅢも興味なしとは言わないが、やはりぼくの関心はⅠのクラシックに集中する。
 その造詣の深さは、幅も深さもただものではない。驚いた。
 中学時代に学園オーケストラのバイオリンを受け持ったのが取っ掛かり、とか。その時演奏したのが「おもちゃの交響曲」(ハイドン)、セレナーデ「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(モーツアルト)、「G線上のアリア」(バッハ)。どの曲もバイオリンの音色に自ら魅了された、という。それが機縁で、クラシック音楽、とくにバイオリン曲が好きになった。
 ラジオで流れるメンデルスゾーンの「バイオリン協奏曲」がクラシック音楽への第一歩だった。LP購入に走る。裏面はチャイコフスキーの「バイオリン協奏曲」とか。両面とも擦り切れるほど聴きまくる。併せてバッハの「バイオリン協奏曲」。これら3曲が氏のクラキチへの案内人となった。

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 さてぼくは、帰宅するやCDの書棚をあさる。すぐに次の作品を手にした。

*Wolfgang Amadeus Mozart
バイオリン協奏曲第1番 変ロ長調 K.207
バイオリン協奏曲第5番 イ長調 K.219 「トルコ風」
バイオリン:ダヴィッド・オイストラフ
指揮:ベルナルト・ハイティンク
演奏:ラムルー管弦楽団)

*Kyung Wha Chung "The Great Violin Concertos"(2枚組)
・Felix Mendelssohn "Violin Concerto in E minor, op.64" with Orchestre symphonique de Montreal, conducted by Charles Dutoit
・Ludwig van Beethoven "Violin Concerto in D major, op.61" with Wiener Philharmoniker, conducted by Kirill Kondrashin
・Pyotr Ilyich Tchaikovskiy "Violin Concerto in D major, op.35" with London Symphony Orchestra, conducted by Andre Previn
・Jean Sibelius "Violin Concerto in D minor, op.47" with London Symphony Orchestra, conducted by Andre Previn

 しばらくこれらの曲を楽しもう。
 あとは下表に、小泉氏愛好の曲が並ぶ。どっさりあるのでどこまで付き合えるか。
 ぼく自身クラシック・ファンだから、飽きることはあるまい。

小泉純一郎氏お気に入りのクラシック、拾い書き
メンデルスゾーン バイオリン協奏曲
バッハ バイオリン協奏曲第2番
パガニーニ バイオリン協奏曲、全6曲
モーツアルト バイオリン協奏曲、全て
ヴィエニャフスキー バイオリン協奏曲第1番
ブルッフ バイオリン協奏曲第1番
シベリウス 交響曲、全て
フィンランディア
バイオリン協奏曲
ドヴォルザーク 交響曲第7,8,9番
スメタナ わが祖国
エルガー 全て
ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第7,8,9番
バイオリン協奏曲
交響曲第3~8番
三重奏曲
ピアノ協奏曲第3,4,5番
シューベルト 弦楽四重奏曲第14番(死と乙女)
マーラー 交響曲第5番
ブルックナー 交響曲第7番
ベルリオーズ 幻想交響曲
イタリアのハロルド
ショパン ピアノ協奏曲第1,2番
チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1,2番
交響曲第4,5,6番

朗読: 13' 29"