ワゴンの揺れまくりが妻にこれほどのダメージを与えるとは。
夜中10時頃、変な物音に突然起こされた。妻がトイレで吐いているようだ。それがその時だけですんだのなら、大したことではない。これまでも車酔いによるこんなことはなかったわけではないから。今度はそうでない。3時頃までもどし続けたのだ。
当然妻は朝食スキップ。ぼくもこの旅、本日の松本城は当然のこと、予定の行動をあきらめた。4日目のチェックアウトまで、旅館で温泉三昧もいいではないか。旅館自慢のおかゆ朝食を一人寂しくいただきながら、そう観念した。
テレビでは、いまこの辺の気温はマイナス1度。一日中晴天で最高温度は17度まで上るそうだ。
妻につられてではなく、ぼくもいやな疲れを感じている。昨夜の飲みすぎがきいたか? それとやはりあの曲がりくねった上り急坂のガタゴト。
朝風呂に入らず、10時過ぎまで寝床でうつらうつら。
「付近を歩きましょうよ」、突然そんな声。耳を疑う暇もなく、妻は既に準備完了。
11時前に宿を出て、絵地図に従って渓流沿いをしばらくぶらりぶらり。快晴にして小春日和を思わせる陽気。妻の表情も和らいでいる。
10分ほど歩いたか。民家風の観光案内所を過ぎたところに二股状に折れた横道があり、そこを入ると、石仏が横並びでこちらを向いている。それぞれ縦50センチ程度か。「三十三観音」だそうだ。
江戸時代、白骨温泉の霊泉的効能を得た湯治客の有志が建立したという三十三体の観音様。
優しいまなざしの地蔵尊と観音様を拝観すれば、昔の湯治客のようにご利益をいただけるかもしれません。(絵地図の説明) |
小さな親切的慈悲を感じながら、飾り気のない周囲の景色にお似合いとも取れた。
本道にもどって先を行くと、1分も経たず右に幾筋も滝が続く。「竜神の滝」だ。
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無数の白糸のような水の流れが美しい竜神の滝。新緑と雪解けのコントラストが見事な早春、紅葉揺らす秋の風景は特におすすめです。(絵地図の説明) |
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ぼくの故郷の那智の滝と比べるのは場違い。ここも周囲の閑散な景色にマッチしている。
竜神の滝、その他の写真
観光案内所のところまで戻ると、すぐ後ろが築山のように盛り上がっている。上ると中里介山文学碑。
絵地図によればこうだ。
白骨温泉は、作家・中里介山が生んだ長編小説「大菩薩峠」により広く世に知られました。故人の功績を讃え偲び、昭和29年に作家・白井喬二が中心となり建立された文学碑です。 |
この碑を見ながらいつぞや山形県の最上川へ行った時の妄想が浮かんだ。最終章のアラカルトに、「大菩薩峠と白骨温泉」と題して記す。
山すそを見下ろすと、隧通し・冠水渓。急流が石灰石を侵食してできた自然のトンネルだそうだ。その近くに、噴湯丘・球状石灰岩があったはずなのだが。
…………
昼食は予定通り「媒香庵」にて。つるや旅館のつい近くだ。
外観も店内の趣きもなかなか。野天風呂も経営しているよし。
名物の「とうじそば」は頼まず。妻は食欲がなく、この鍋料理は2人前が決りだから。……、ぼくは信州ざるそば、妻はおかゆ定食にする。妻の食べ残しを含めてぼくは満腹以上。
媒香庵、その他の写真
そうこうしているうちに、かれこれ2時前。本日の観光を切り上げることにした。
湯上りのあと、6時から夕食。
妻は料理を半分ほどで終え、ぼくは禁酒デーとする。
テレビをしばらく見たあと、2人とも寝床へ。今夜は妻も静かに眠りに落ちた。
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