3日目(8月27日) 喜多方と五色沼
8時、おおみや旅館出発。途中"東光の酒蔵"(山形県米沢市)を見学、試飲。大吟醸の冷酒は《やはり!》だったが、舌の実力(ふところ具合?)と妻の渋い顔に折れて、みやげは次点の特別本醸造"東光美味酒(うまざけ)"にした。
11時、喜多方着。町中ラーメン屋だらけだから面白い。車中で配られたイラストマップもラーメン屋で塗りつぶされている。どこで食するか。
12時半の集合時刻まで1時間半のフリータイム。その間に適当な店を探し、適当なラーメンを注文し、十分に味わうことができるか。
そこはそこ、添乗員が"適当な"3店を教えてくれた。坂内(ばんない)食堂、まこと食堂、源来軒。
まこと食堂を探して入る(たまたま他の2店は本日休業≠セった)。
ぼくがチャーシューメン、妻は中華そば(普通のラーメン)にする。ぼくはまだ意欲ほどに食欲わかず、妻の満足げな顔とは裏腹に、かなり残してしまった。
早い時間帯でもあったから、並ぶことなく奥まった和室に案内されたが、帰り、出口は長蛇の列をなしている。やはり町きっての人気の店だった。
テーブルで隣り合わせた地の婦人が上記の3店に加えて、お薦め店を2軒教えてくれた。念のため、メモしておく。あべ食堂、まつり亭。
五色沼自然探勝路
裏磐梯五色沼(福島県)に立ち寄った。ツアー最終日の目玉だ。磐梯山の真北で、桧原湖に接している。磐梯山噴火が生んだ湖沼群という。
毘沙門沼から柳沼まで、標高750m〜850mのほぼ平坦なコース(3.6km)を、1時から2時半までゆっくり歩く。が、ここは妻が少し気分すぐれず、ぼくのひとり歩きとなった。
曲がりくねった山路を気ままに歩く。雑木林が天を覆って、わずかな木洩れ日が天然の静かな息づかいを感じさせる。
赤沼、みどろ沼、竜沼、弁天沼、瑠璃沼、青沼、そして柳沼。水の色ってこんなに変化するものか。木々の緑とそっくりなのから、同じ緑でも濃淡さまざまな色模様、そして水色、灰色、濃紺、……。同じ沼でも一色ではなく、微妙に、またくっきりと色分けされている。
二つ思い出した。その一。
3年前(1999年)の10月、山仲間と奥日光戦場ヶ原へ行ったとき。山道から切込湖を林越しに見ての錯覚。その状況を別文から転記する。(山歩き第26話「戦場ヶ原、切込湖・刈込湖」)
切込湖に向かっていた。と、右前方が開けて、濃く青い空色、そう、コバルトブルーが下一面に広がった。まるでキャンバスに向かって巨大な絵筆で原色を殴りつけたよう……。
《なんだ、これ!?》
しばらく唖然として見入った。
その濃い青絵の具の向こうに目を転じると、今度は一面まだらの緑。黄ばんでいたり、赤や白い斑点もある。
《こんな景色初めてだ! しかし、なぜ?》
ぼくの大仰なけげん顔に山仲間が気づいて、
「切込湖だよ!」
《そうだ、切込湖! 切込湖なのだ!》
錯覚から目が覚めた。コバルトブルーはまさに空。そして湖水向こうの斑(まだら)模様は紅葉の山。湖面の逆景だった!
その二、学生時代。
クラスメートのY君、M君と三人で磐梯山へ登ろうとしたときのことだ。もう40年も前になる。あのとき、ここを歩いた。山には無縁のM君とぼくはただ疲れ果て、「なんの因果で磐梯山」と、Y君の励ましをよそに、この五色沼散策でお茶を濁したのだった。
これも別文(山歩き第20話「尾瀬・燧ケ岳」)のを引用する。
大学時代に学友3人で磐梯へ行った。2泊3日。生まれてはじめてのハイキングだった。Y君はワンゲル部で、ぼくたち2人を誘った。五色沼を通った記憶はあるが、磐梯山には登らなかった。Y君のかいがいしいお世話とは裏腹に、M君とぼくはただただ疲れて、目的の磐梯山頂をあきらめたのだった。
以降、Y君は誘わなかった。ぼくも山やハイキングはそれきりになった。
終点の柳沼が見えると、妻が迎えに来ていて手を振った。顔色がよくなっている。
「急がなくっちゃ。みんな待ってるわよ!」
一瞬慌てたが、後続がまだいるのをいいことに、数枚スナップ写真を追加した。
3日間とも好天に恵まれてよかった。晴れてよし、降ってよしとはいえ、雨だと目当ての最上川、山寺はきつかったはずだ。中止になったかもしれないし、そうでなくても芭蕉の旅をどれほど味わえたことか。
帰りがけ、栃木県益子焼センターで休憩のあと、4時半、塩原インターで東北自動車道に入る。順調だとナイター中継はまだ終わってないだろう。
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