9:30 |
和橿山荘を出発 |
10:00 |
芦ノ湖桃源台着 (740m)
ロープウエイで大涌谷 (1,044m) |
10:30 |
大涌谷の登山口から神山へ登山開始 |
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大涌谷から見た神山 |

大涌谷の登り口 |
しばらく硫黄の噴煙を横殴りに受けながら登る。雲はあるが雨や雪の心配はまるきりない。晴れ間がだんだん広がっている。
うれしいのは暖かいこと。ウインドブレーカーは登山開始早々ザックに閉まった。ベストも脱いだ。
つらいのは足元。ぬかるんで、かき氷状の泥道は前日と同じ……というより、もっとよくない。火山灰の道はこんなに悪くなるのか、と変な感心をするほどだ。滑るまいと思っても、ズルル! ズルル!
歩く速さも普段の半分ほどにのろくなっているに違いない。それでいて労力は反比例している。メガネには額の汗がたまるし、背中もかなりぐちゅぐちゅになっている。
それでも少しは眺望を楽しみながら、12時神山頂上に到達した。(1,438m)
本のとおり、山頂からはなにも見えない。あるのは頂上の標識とわずかなスペースのみ。仮に足元が乾いていてきれいであっても、「景色を楽しみながら昼食」というわけにはいかない。各自大涌谷の売店で求めた軽食を立ち食いした。
12時20分、駒ヶ岳へ向けて縦走ルートを出発。

駒ヶ岳
相も変わらず、足元はズルズルのズブズブ……。おまけに露出した小岩も信用がおけない。登りよりも下りの方が遙かに難行である。
駒ヶ岳への分岐点を過ぎたあたりからぐっと視界が開けてきた。
そして風が出てきて、雲を遠くへ遠くへ吹き飛ばしている。ワイプアウトという英語の表現がいいのかどうか知らないが、全ての雲をぬぐい去って、みるみる「これが晴天だ!」という空にしてしまった。
厳しい岩場をよじ登って、尾根道に出たとたん、「うしろ見て! 富士山!」
女性が嬌声を上げた。

霊峰が間近で雪の肌を見せている。
振り返り、また振り返る。否応なしに感動が深まった。
『主よ、人の望みの喜びよ』
バッハの小品だが、そのメロディを思い出した。静かな至福を音で表現するとこうなる、というような名曲。いま、この曲が一番似つかわしいと感じた。
1時半、駒ヶ岳頂上。
箱根元宮(1,357m)に念入りに参拝し、賽銭をはずむ。

頂上はワイプアウトどころか暴風だ。先日、日本橋東急の店じまいの日に買った愛用の帽子が吹き飛ばされた。危うく拾い上げたはいいが、無残にもべっとり泥がついていた。
…………
駒ヶ岳からケーブルで箱根園へ。レストランでくつろぐ。
芦ノ湖を眺めながら、遅い昼食はかき揚げうどんにした。
箱根湯本まではバスを利用する。乗り継いでロマンスカー「あしがら」で新宿へ。
金時山では吹雪、翌日の神山・駒ヶ岳では思わぬ恵み、一泊二日の山行が終わった。
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山歩き第12話「箱根金時山、神山」 おわり