三輪崎(新宮市三輪崎区)は熊野古道の大辺路沿いで、太平洋の熊野灘に面しています。高野坂という小山を越えれば新宮市街です。
その高野坂が熊野古道の名所の一つで、途中の展望台から眺める海景色は一見の価値があります。
三輪崎は昔、捕鯨の村でもあったのです。
熊野三山本宮大社への参詣道(石段の脇)に当時の捕鯨舟の模型が祀られていたとか、幼少時、ぼくの家の2階から鯨が沖で潮を吹いているのを見た覚えのあるとかは別として……。
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インターネットのサイトより転載 |
その往時を偲ばせる鯨踊りは、和歌山県の無形民俗文化財として、三輪崎郷土芸能保存会によって伝承されています。毎年八幡神社の例大祭に、大漁を祈って海岸の広場で披露されます。
衣装を整えた若者たちが輪になって鯨を取り巻き、網でとる様子を踊りにした殿中踊り。筒を手に、鯨を突く様子を座ったまま上半身で踊る綾踊り。
両方とも歌と笛・太鼓に調子を合わせてきらびやかです。この場面が例大祭の盛り上がり最高のときです。
殿中踊り
(ヨヨイエー)
突いたや三輪崎組はサ (ハア三輪崎組はサ)
親もとりそえ 子もそえて
前のロクロへかがすを付けてサ (ハアかがすを付けてサ)
大背美巻くよな ひまもない
組は栄える殿様組はサ (ハア殿様組はサ)
旦那栄える いつまでも
竹になりたやお城の竹にサ (ハアお城の竹にサ)
これは祝いの しるし竹
船は着いたや五ヶ所の浦にサ (ハア五ヶ所の浦にサ)
いざや参らん 伊勢さまへ
(ソリャ 一国二国三国一ジャー)
綾踊り
(ヨヨイエー)
今日は吉日きぬた打つ (アヨーイヨイ)
今日は吉日きぬた打つ
お方出てみよ子もつれて (アーきぬた)
なんとさえたる枕やら (アヨーイヨイ)
なんとさえたる枕やら
よいと夜中に目をさます (アーきぬた)
淀の川瀬の水車 (アヨーイヨイ)
淀の川瀬の水車
誰を待つやらくるくると (アーきぬた)
沖の長須に背美を問えば (アヨーイヨイ)
沖の長須に背美を問えば
背美は来る来る後へ来る (アーきぬた)
伊勢のようだで吹く笛は (アヨーイヨイ)
伊勢のようだで吹く笛は
響き渡るぞ宮川へ (ヨヨイエー)
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半農半漁の村だった三輪崎も、鉄道・道路とも新宮市街との往復が便利になっているいま、サラリーマン家庭半分の町といえるでしょうか。
それでも海と山に挟まれた猫の額のような田園風景はウソをつきません。そして受け継がれている風習、伝統文化、食生活。
今と昔をあんばいよく併せもつ海沿いの町三輪崎。ぼくのささやかな誇りです。
なお、「伊勢に七度、熊野に三度」と唱われる熊野三山ですが、速玉大社は新宮市街にあり、那智大社は新宮市の隣町にあたる那智勝浦町の那智山を上ったところです。本宮大社は、熊野川の上流のところにあります。
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