Part 1 苦あり楽ありの夢
Part 2 見果てぬ夢
2014年秋、夢二題
Part 1 苦あり楽ありの夢

 日本の原風景を自分なりに海外の人々に紹介できないかと、今年(2014年)になって、これまで書いた国内各地の紀行文やエッセイの英文化に励んでいる。といっても電子辞書と首っ引きの心もとない英語だから、人知れず苦労は言うまでもない。とりあえずは、通じればよい、との思いで。
 以前から手がけていた「ふる里〝南紀熊野〟紹介(英文編)」を土台に、まずはいわゆる俯瞰的(ふかんてき)にと、日本列島を空から見渡すかたちで、3年前(2011年)に旅した「日本最果て岬巡り」の英文化にかかり、終えたのが5月。南は九州鹿児島の佐多岬、四国高知の足摺岬、北は北海道稚内の宗谷岬まで、本州は日本海側の主だった突端の景勝を紹介した。
 …………
 以降11月のいままで、国内紀行文の英文化を続けている。
 北から数えて、真冬の北海道、芭蕉の歩いた東北地方、日光と戦場ヶ原、奥能登と五箇山合掌集落、琵琶湖と近江地方、出雲大社とその周辺、山陰・山陽。そしていま、近くの房総半島。量だけは一話また一話と順調に増えている。
 残念なのは、四国、九州、沖縄について。旅したのがずいぶん前で、その頃は紀行文にまで思い至っていなかったから、旅ごとの写真集が残っているだけだ。四国と九州については、いずれ回想形式で文章化にチャレンジもできようが、沖縄はお手上げ。
 ということで一念発起し、今月(11月)、妻と「沖縄本島巡り5日間」のツアーに参加した。近いうちに紀行文を仕上げ、その英文化で海外への〝ぼく〟の沖縄紹介にするつもりだ。

 自身の印象と思い入れによる日本の風土と伝統文化を海外に向けて発信。そう思い立った理由は二つ。

 第一に、わが心の日本を海外に紹介したいという願望。
 故郷の南紀熊野を外人にもっと知ってもらおうと、このホームページ「中高年の元気!」の「南紀熊野」という広場に集約してあるエッセイや紀行文の英文化を、だいぶん前から続けていた。その過程で、南紀熊野だけでなく、日本各地の風土や伝統文化は、国内だけでなく世界的に誇れるのではないか、という考えにいたった。
 幸い還暦以来各地を旅してかなりの紀行文を残してあるし、写真を撮りだめてもいる。
 それらを英文にするだけでも一応の体裁が整うのではないか。

 第二は、「英会話と英語」上達のため。
 数年前に英会話クラスに通いはじめた。暇つぶしの軽い気分だったが、けっこう楽しんでいる。クラスメートとの日本語混じりの語らいと教師グレースさんのユーモラスな指導が支えだ。自身の現状レベル・弱み・課題も見えてきた。
 英語は、「読む、書く、聞く、話す」が(とどこお)りなく行えて一人前と言えようか。であれば、辞書の助けを借りれば「読む、書く」はなんとかまかなえそうだ。が、「聞く、話す」は別次元。ハードルの高さはもとより、辞書のような手っ取り早い助っ人はいない。
 それこそこの領域は、45年前の米国留学(1年)や30年前の米国駐在(2年半)を含めて後味の悪い挫折で、理想の達成はもはやおぼつかない。それを承知で、一歩でも近づけるよう七十の手習いよろしく、気ままな亀の足歩きを続けている。
 英語ニュースはちんぷんかんぷんだし、しゃべろうとするとすぐにつっかえる……。この歯がゆい気持ちは、次章で「見果てぬ夢」と題して告白する。

 「英文での日本紹介」は、理想というほどの高いハードルを意図していないから、一話完結ごとにそれなりの充実感を味わっている。〝多分通じるだろう〟程度の現状レベルに満足しているわけではないが、一応は前に進める。それこそ苦もあり楽もありだ。
 ということで、本件、いまにいたった考え方とこれからの思いをメモしておくことにした。

………………………

 「日本の伝統、文化、地方色……、そんな固有の風土は、日本人よりも海外の人々をもっと惹きつけるのではないか」。
 今年になって、つらつら考えていた夢への挑戦に取りかかっていた。
 名だたる名勝・旧跡等はすでに種々英文で紹介され、海外からの観光客の役に立っていよう。が、それらのほとんどはその町の観光宣伝であったり、各種観光誌に掲載されたものだ。見事な写真をともなった美文は踊っているが、その道のプロによるお披露目であって、生身の息遣いが読者に感じられるかどうか。
 日本人が自身の経験に基づいて〝わが風土〟の紹介を英文で伝えたものはまださほど多くないはずだ。だからこの夢は追いかける価値がある。思いがどこまで遂げられるかわからないが、ぼくに課せられた役目のような気がする。日本の田舎文化が好きで、紀行文もそれなりに残しており、多少は英語がわかるものとして。

 幸い国内紀行文は長短織り交ぜて十数本書いてあるし、故郷南紀熊野についてはそこそこに英文紹介をすでに仕上げた。
 英文の巧拙はこの際不問とし、とりあえずはこんな作業のチャンスを見つけたことに気をよくして、前に進むことだ。

 …………
 取り掛かって半年たったいま、「中高年の元気!」の一角を占める「English Edition」広場も量的にはかなりの数になり、(さま)になってきたと自己満足もし、追加の喜びも味わえるようになってきた。
 九州西端神崎鼻、南端佐多岬、北海道東端納沙布岬、北端宗谷岬を巡る過程で、各地の名勝に立ち寄り、地方文化にも触れた「日本最果て岬巡り」(2011年)の英文化は先頭ランナーとしてふさわしい題材だった。
 以来、南紀熊野に加えて、前述のとおり、十数ヶ所の紀行文を英文にしてきた。四国、九州、沖縄が未着手なのは大いなる片手落ちだが、まずまずの進行状況と自認している。

 もう一つ。生まれ故郷は「いの一番」に果たしたとして、いままで30年以上住まっている千葉県浦安とその近郊、とくに気に入って何度も出かけている温暖な房総半島については何ら紹介していない。
 そんな思いで、最近は房総半島の紹介に力を入れている。
 外房の銚子と犬吠埼、南房総の安房小湊周辺、内房の鋸山と日本寺を仕上げた。南房総の白浜界隈と野島崎、それにもう一つ二つ追加するつもりだ。

 房総半島の紹介を果たしたとして、いまや遅しと出番を待っているのが、沖縄、四国、九州。それに日光。
 先年の妻との日光小旅行を、写真集を頼りに英文での紀行文としたが、満足していない。日光駅からほど近い世界遺産群は、通り一遍に紹介してしまうをはばかる。世界遺産であることはともかく、日本の伝統文化でひときわ輝きを放つ江戸・徳川時代。その初期から中期にかけての誇らしい遺産で、自分なりに海外に伝えたい思いがつのる。
 そんなとき、妻が友だちから浅草・日光間の東武電車フリーチケットを得た。年末までにそのご利益で日光行きを果たし、わが思いの英文紹介にこぎつけようと思っている。来年早々の仕事となろう。

朗読 13'06"
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