朝湯もこれでは本館まで行く気になれない。13時のチェックアウトまで部屋に居続けることにして、朝湯は部屋付きの小さな湯船ですませた。
「午前中はハイランドパークで楽しんでください」がこのツアーのうたい文句だったが、こんな状況で楽しめるはずはない。案の定、パークはこの日休みとなった。
2階の玄関を出て、雪に隠れた階段をそりに乗った形ですべり降りる。道は道なき道、ゴボゴボと靴を埋もれさせながらたどたどしく歩いて本館へ向かう。何事もなくてよかった。
帰りのバスを待つ間、「いつもより20日は早い」と現地の人が言う思わざる雪景色を写真に収めた。
13時半、ピュアコテージを出発。帰りは旅行社ご自慢のデラックスバスでゆったりだ。
近くのアウトレットに立ち寄って時間をつぶし、暮れ方からあしかがフラワーパークでイルミネーションを楽しむことになっている。
那須ガーデンアウトレット
東北自動車道で隣の黒磯板室インターを下りるとすぐだった。
幕張メッセのアウトレットより大きいのではないか。スポーツ、カジュアル、ファッション……、ブランド店が軒を連ねている。
2時間のショッピングタイムを与えられたが、いつに似合わず妻の目は輝かない。気分は優れているのだが、ぼく同様これといってほしいものがないのだ。だから当てもないまま軒並みをさまよう。
やはり大雪のせいか、見るからに客足は途絶えている。どのブランド店も気勢が上がらず、本日休業に近い。店員のみなさんは手持ちぶさたで、笑顔も「いらっしゃいませ」のかけ声もさえない。
LOCO Marketだけはそこそこにはやっている。地場産品づくしの一角なのだ。勇んで入る。
妻は里芋、茄子、人参といった野菜。ぼくはソフトクリームをなめながら、柿とリンゴを買い物カゴに入れた。
まだまだ時間がある。遅い朝食で空腹感はないのだが、「八ヶ岳蕎麦・二八」に入り、二人ともざる蕎麦小盛。
雪はもうチラホラだが、積雪は子供を喜ばせるだけ十分にある。閑散とした広場で父さんと雪だるまに精を出していた。
あしかがフラワーパーク
那須高原から南へ、直線距離にして100kmほど走っているのだろう。地形的に格段の差があることを、車窓を過ぎゆく景色の変化がこれ見よがしげに教えてくれる。
足利市の標識が見えはじめた頃から雪景色が消える。いつしか曇天が去って青空がのぞいている。
16時を過ぎると日が暮れた。
「富士山です!」、その方向、寒そうな夕焼け空の彼方に見なれたシルエットが際立っていた。
東北自動車道を佐野藤岡インターで一般道へ下りるあたりから、それらしきイルミネーションが輝きはじめる。
フラワーパーク着、17時。
夜空は星に代わって180万球超といわれるイルミネーションが、それこそきら星の如くである。名付けて「フラワーファンタジー」、10月末から来年1月末までの催しだそうだ。
このフラワーパークが藤棚で有名であることを妻は知っていた。
なるほどあるある。イルミネーションは季節を超えている。春夏秋冬の花々が競いあって、中でも藤がぬきんでている。むらさき藤の藤棚、きばな藤のトンネル、白藤の滝、うす紅藤の屏風……。それぞれの花模様を生かしたイルミネーションで、彩り鮮やかだ。
どうせ帰りがけの駄賃で、子供だましの催しと思い、心は一路上野へまっしぐらだったぼくも、気がつくと、この豪華絢爛ショーに魅せられていた。妻はいうまでもない。時間いっぱい広い園内を歩き回った。
フラワーステージ、銀河鉄道、レインボーマジック、天空のお花畑と天の川、スノーワールド、日本の四季、光のピラミッド、イルミネーションタワー、……。
肝心なことを忘れるところだった。ここは「あしかがフラワーパーク」なのだ。
「樹齢145年を超える600畳敷きの藤棚」が売りで、4月から5月にかけての藤の盛りをピークに、下図のとおり、四季を通じて様々・色とりどりの花に出合えるそうだ。
…………………………
自然渋滞もなく事故渋滞もなく、とはいっても上野駅前到着は予定どおり20時を過ぎたところだった。
電車を乗り継いで、舞浜駅からはバスで10分。新浦安のマンション自宅には9時半に着いた。
「明日は午前中PALで体をほぐし、午後から写真整理」と心に決めている。