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6両編成の安房鴨川行きは、千葉駅の南、蘇我駅から、まずは東京湾に沿って南下する。姉ヶ崎、袖ヶ浦、木更津、君津、富浦、館山。ここで左へ折れて内陸を近道し、九重の次が外房の千倉駅だ。ぼくたちはここで降り、列車は太平洋沿いを北上して終点の安房鴨川へ向かった。その向こうに勝浦市がある。
南房総といえば、3年前の秋、富浦に2泊した。ホテルのテニスコートで汗したり、海岸の遊歩道を楽しんだ。
この地、学生時代にも来た。寮に泊まって、体育の必須講座「遠泳教室」に参加したのだ。心理学の大御所・太田可夫教授が一緒され、ぼくが南紀熊野出身と知るや、ずいぶん親しくしてくれた。
「君、ぼくのゼミに来たまえ」、法外なご託宣。従っていたらどんな人生になったのかなあ。
先生、若かりし頃、こんなエピソードをもつ。
(小宮山量平氏は)哲学のベクちゃん(太田可夫先生、当時講師)を敬愛する。太田講師はずっと国立構内の官舎に住まい、次々と子供をもうけた。訪ねると、子供たちが小さい順に、「ド・レ・ミ・ファ・ソ」と現れる。……ということは、その時子供5人だったか。「雑記帳第37話」
ローカル電車数時間の車中、のどかな海景色に目をやりながら妻と雑談したり、ヘッドホンでぼく自身の英文朗読を聴いたり……。
数年前から英会話熱に目覚め、シニア英会話教室に通い、雑誌付録の英語CDをiPodにコピーしてヘッドホンで聴いたりしている。
今年初めにたまたま図書館の書棚に「名演説で学ぶアメリカの歴史」(研究社)を見つけた。CD2枚付だ。借りてパラパラめくっているうちに引き込まれた。とどのつまりが続編の「アメリカの文化と社会」と一緒に購入して、ぼくの英語・英会話学習の教材にしようということになった。
英文をワープロしては、CDの音声を真似て「英文朗読」を繰り返している。2冊に網羅された全ての演説となると、それぞれが演説の一部分ではあっても相当な量である。やや不自由な左手指にはかなりきつい運動量だが、遅ればせのリハビリにうってつけともいえる。朗読も、誤読・トチリ・舌のつっかえだらけで、何度もやり直しだから、愉快な作業ではない。
が暇つぶしと思えば、目覚ましい語学向上の助けにならなくとも、苦しさ半分の楽しいひとときだ。
それでよせばいいのに、古希の年齢の思い出に加えることにした。この「中高年の元気!」に「名演説で学ぶアメリカ」という新広場を作って、著作権が絡む演説以外を、総計2時間9分のぼくの朗読付で掲載したのだ。
いい機会だから、この一年にお披露目できたぼくの趣味の延長を「古希の年」として、このエッセイに引き続き、「小話集第45−2話」で記述する。
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