Part1 出雲大社フォーゲル・パーク
Part2 足立美術館、松江城
Part3 玉造温泉、アラカルト
Part 3 アラカルト
玉造温泉、紺家&夜桜

玉造温泉街

出雲神々縁結びの宿「紺家」

 玉造温泉は、島根県松江市玉湯町にある。
 JR山陰本線の駅名そのものが玉造温泉≠セから、駅を下りると温泉街ということになる。

 玉造温泉、一度は行ってみたいと思っていた。出雲国風土記にこう記されているよし。「一度湯に入ると容姿が端正になり、再び入れば万病が治る」。
 告白すると、にも拘らず心身ともに疲れていたせいか、名にし負う無色透明の温泉を、それも有名温泉宿で、3泊とも心ゆくまで味わわず仕舞いだった。夜は夕食前に3度とも入ったが、朝は2度だけに終わった。

 駅の西側に玉湯川が南からすぐ北の宍道湖に流れている。川沿いの両側に15軒のホテル・旅館が立ち並び、ぼくたちの宿「紺家」は駅寄りで、徒歩10分ということだった。
 ただし、出雲空港と宿の往復は送迎バスだし、滞在中も観光地への行き帰りはバスを利用したから、玉造温泉駅は無縁で終わった。

 「紺家」玄関横にこんな看板があった。

 …………
 玉湯川沿いの温泉街は、足立美術館のシャトルバスを待つ間と、その夜にぶらぶらしただけだ。
 桜並木はまさに見頃で、まばゆいばかり。もう一つ目を引いたのは、道沿いのオブジェ「神話の情景」九体。ここは出雲なのだ。

八俣大蛇退治
姫神 因幡の白兎
恋山 根の国訪問
大国主命の妻問い 三種の神器
佐太大神誕生 八十神の迫害

 「紺家」は、とくに「出雲神々縁結びの宿」と称している。4階和室に3泊した。

 玉湯川沿いをほろ酔い気分でそぞろ歩きしながら、ライトアップされた花景色にシャッターを押した。


 安来駅で思い出した

 足立美術館から松江城へ向かうのに、安来駅から松江駅までJRを利用した。
 安来駅のプラットホームにたたずむと、「日立金属安来工場」が見えた。
 大同特殊鋼築地工場(名古屋)で鋳鋼品の生産工程管理にたずさわっていた頃というと1960年代後半、思えばもう半世紀前になる。
 確かステンレスバルブで最大の競合メーカーが日立金属安来工場だったはずだ。品質・価格・納期・アフタサービスともに、工場・営業あげてライバルの動向に神経を使い、毎月の生産連絡会議では、定例的に営業が状況報告したものだ。
 1980年代に2年半ほど米国ニューヨークのDaido Steel Americaに勤務した。日立金属のS氏とは同業のよしみで親しく付きあった。彼も入社直後は安来工場でぼくと同じような仕事をしたと言ってたっけ。


足湯に浸かって原稿チェック

 3日目(4月5日)、松江城見物を終えて帰途につく。
 一畑(いちばた)電車の「しんじ湖温泉駅」まで松江市内循環バスで来て、駅のロータリーで玉造温泉行きの路線バスを待つ。約1時間半、妻はその辺を散策することにし、ぼくは駅前の足湯休憩所を見つけた。
 実はこの旅の合間にずっと、幻想紀行文「イベリア半島2005」の原稿を加筆修正している。およそ8年前のスペイン・ポルトガル、10日間≠フ旅だ。初稿段階でチェック用に朗読し、2時間半の長編(文庫本1冊分?)であることを確かめてある。
 この作業があるから、田舎の交通不便はむしろありがたい。
 足湯に浸かり、ヘッドホンで自身の朗読を聴きながら原稿チェックにいそしむ。1時間ほどで妻が帰り、撮ったのがこの写真です。

 因果な性格とあきらめているが、この旅行の間、ホテルでは朝も夜も、観光中はこのようなときに、イベリア紀行文の加筆修正に励んだ。いつものこととて、妻は観念している。
 2月末から3月にかけて、取り立ててやることがないのをいいことに、8年前のこの旅行回想に挑戦することにした。それが意外と苦戦を強いられ、加えて3月下旬に「小学生たちとマラウイ大使館訪問」というイベントのレポートが重なったため、どこやらの路地裏に迷い込んだ状態で4月になだれ込んでいた。
 8年前の体験は回想可能の圏外≠セった。予想外。撮りまくっていた写真を何度眺めても思い出せるのは本当にわずかばかり。忘却とは忘れ去ることなり。正直われながら驚きあきれ、失望した。
 開き直って幻想≠ニいうことにしたが、残念ながら夢まぼろしに現実味を帯びさせて、ダイナミックに展開させうる力はなかった。が折角と、この旅行を巻き添えにして大いに奮闘し、かなり加筆した。
 帰ったら、国際センターのKさんが「昨年スペインへ行ったときの写真、よろしければ」と、時の氏神になってくれた。おかげで、尻切れトンボになりかかっていた最後のところに、いいオチをつけてくれたと喜んでいる。
 1週間前になんとか、雑記帳第74話「回想イベリア半島2005」として公開することができた。ご参考まで。

Part3 朗読 9分38秒
<Part2 雑記帳第67話
「春の出雲地方2013」
おわり
Part1 出雲大社フォーゲル・パーク
Part2 足立美術館、松江城
Part3 玉造温泉、アラカルト
再朗読(2023.08.01)
「春の出雲地方 2013」
part1 part2 part3 total
6:58 7:12 8:33 22:43
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 わかりづらい地図で恐縮ですが、宍道湖を取り巻いて、
 ・南の玉造温泉(松江市)に3泊し、
 ・ずっと北西にあたる出雲大社(出雲市)、
 ・すぐ北の松江フォーゲルパーク(松江市)、
 ・東側の松江城(松江市)、
 ・そしてずっと東南の足立美術館(安来市)
 を見学しました。
 足は、シャトルバス(足立美術館)、路線バス、それに一畑電車とJRを利用しました。