2010年ゴールデンウィークの5月4日、緑の日。二人で上野動物園に行った。
 前日妻はテニス三昧、ぼくは千葉のショートコースでゴルフレッスン。スポーツの一日だった。
 最近は妻があれやこれやで忙しく、二人連れだってがなかなかむずかしい。それが珍しく可能となった本日、動物園をのんびり散歩ということで、意見が一致した。2月に北海道の旭山動物園を見物したときに約束したことだ。
 昼前に浦安の自宅を出発して、JR上野駅構内のプロムナードで幕の内弁当を買う。
 上野公園に入ると、華やいだ音楽が聞こえる。ひと頃西田佐知子で有名になった「コーヒールンバ」を奏でている。南米の音楽グループだ。立て看板には「フォルクローレK'arumanta=vとある。
 演奏している広場の後方に二人分座れる空きがあった。弁当を広げて、ディナーショーならぬ、豪華なランチタイムとする。
 グアンタナメラ、El Condor Pasa、……。知らないメロディも、スパニッシュ・ギターとサンポーニャの音色に乗って、心地よい。囲んだ観衆も立ち去ろうとしない。
 食後は前列へいってしばし聞き入った。
 2時過ぎて動物園へ急ぐ。近づくにつれて家族連れ、子供たちがどんどん多くなる。
 ゴールデンウィークのこの日は入場無料だった。うれしいと同時に納得もした。入場者が飛躍的に増えて、近いうちに旭山動物園並みになるだろう。
 案の定、園内は予想した人混みどころではない。人いきれがするほどだ。ぼくたち以外はこの日を知っていたに違いない。
 表門を入ったところから、行列なりに東側の道を辿る。但し動物や鳥たちのいるところは垣間見るとまでもいかず、想像たくましくして通り過ぎるところが多かった。
「平日に来るときの参考にしましょうよ」
 妻も観念したようだった。2時間歩いて、カメラに納められたほぼ全てがこんなものだから、さもありなんでしょう。
 夏を思わせるような陽気が手伝って、アイスクリーム、ソフトクリーム、かき氷屋は、人気の動物並みの人だかりだった。
 動物園を出て案内図を確かめると、歩き回ったのは東園のほぼ半分だけだった。西園には行かず。
 動物や鳥たちに興味を覚えてきた今日この頃、「近いうちに3回くらいに分けて、ゆっくり見て回りたいね」と妻を見る。彼女うなずいているが、問題は日にちの調整……。
 帰りは御徒町で電車に乗ることにして、アメ横を通る。
 この前台北の夜市でものすごい人混みを経験して、紀行文に「上野のアメ横は比ではない」と書いた。本日に限っては訂正せざるをえない。
 今年のゴールデンウィークは行楽日和一気通貫≠ニあって、海外・国内の旅行、行楽地の賑わい、どこもかしこも道路の渋滞……云々が報じられている。少子化が叫ばれる中、日本人はこんなに多くいたのだろうか。
 御徒町でクラブ5本用の簡易ゴルフバッグと手袋を買うのがせいぜいだった。
 そう、ゴルフのこと、ゴルフ道具のこと。
 古希を目前にして、運動不足による体の衰えを実感している。週に一度のテニススクール、それも1時間半のレッスンと20分程度の練習試合だけではたいした運動量ではない。ウォーキングもそれなりにやってきたが、最近は怠けている。長続きできそうな何かもう一つはないか。
 そんなとき、テニスのフェローズがゴルフスクールもはじめた。4月中旬から通っている。といってもまだ3回だけだから、先行きを案じられそうだが、そうならないように。
 帰ったらうれしい便りが三つ来ていた。メールとメール添付と、ハワイから小包だ。
 メールは同じマンションの友人A氏から。「打ちっ放しにお誘いします。よろしければ明後日朝6時、玄関で会いましょう」
 望むところだ。当然「よろしく」と返事する。
 これは次の話につながる。
 メール添付は、前日のゴルフレッスンの写真。
 ゴルフは25年前の脳梗塞罹病以来遠ざかっている。18ホールを歩くのはしんどいし、何より自慢の飛距離が涙ぐましい状況に陥った。10数年前に復活を期したが、やはり面白くなく断念した。その後いままで全くクラブを握っていない。
 トランクから一式を取り出すと、アイアンはさび付いているし、グリップはウッドも全てツルツル。1本1000円ちょっとで修理に出した。
 何を今更の感があるが、意を決した事情は別の紀行文で述べた。(雑記帳第58話「台湾点描2010」) いまの体調を維持するためには、ゴルフの練習を加えるしかない!
 千葉から東金方面への道沿いにあるショートコースで特別レッスンのあることが知らされており、どうしようかと迷っていた。
 娘婿のS君に同行を打診したら快諾。彼は最近練習を始めたばかりだ。
 朝早くS君にピックアップしてもらった。それが前日。参加者は5人だった。
 パター練習、打ちっ放しレッスンのあと、9ホールを二度回った。スコアを数えるレベルでないことを痛感した。コースに出ることは念頭にないとしても、身の程を思い知らされた。思った以上にくたびれた。
 時々はこんな特別レッスンもいいとして、当分はみっちりかごの中と、A氏の通う練習場で足腰の運動に励むつもりだ。週一度のテニススクールに加えて。
入ったと思いますか? もちろん×
左がS君、右がNコーチ
 小包はハワイ島コナに住むダニー君(Daniel Swanson)からで、DVDが1枚入っている。先日メールで知らせてきたプレゼントだ。
 パソコンに入れて確かめると、ダニー君の父でぼくの恩師グレン・スワンソン先生ご夫妻の「若い頃から、日本での数十年の生活、老いて日本から米国へ帰るまで」の数々の写真が収まっている。
 ご夫妻ともいまは帰らぬ人だが、写真の先生も奥様も画面から飛び出してきそうで、目に熱いものを感じた。
 スワンソン先生とのことは一口で言えるはずもないし、思い出しつつしゃべれば果てしない。
 ここでは何枚か写真をお目にかけるにとどめ、近いうちに先生との思い出をつづるつもりである。
小話集第42話「上野動物園にて」 おわり
朗読(12:38)  on
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