4月25日に埼玉県戸田コースで行われた商東対抗レガッタ2004は、のっぴきならない用事と重なってしまい、応援に行きそびれた。翌朝、メーリングリスト(JFN)で母校の惜敗を知る。東大vs一橋の対校ボートレースだ。

 昨年の5連覇以降、中村達夫先輩の鼻息は荒く、
「まだまだ連勝は続くよ。なにせ東大には9連敗という借りがあるのだから」
 今年のレガッタ勝利は当然とのご託宣であった。
 商東対抗レガッタの競技は、中村先輩たちの「80歳台」をはじめ、多種目にわたるが、真打は対抗エイトだ。
 そのエイトが僅差で敗れ、6連覇は消えた。先輩の落胆は察するに余りある。
 悲報を知るや、すぐにFAXで、欠席のお詫びと、「さぞかし気落ちされていることと……、応援に行かなかった私にも責任ありと……」云々、述べた。
「そのとおり、気落ちしています。『貴君が応援に来なかったから』と、芯から思いつめています」
 先輩の返信は厳しかった。
 加えて、「近日中に『残念会』を準備してください」と。

 先輩との会合は、望んで実現できるものではない。瓢箪から駒で欣喜雀躍、先輩の悔し涙もものかは、有志数名に声をかけた。先輩からは、
「奥野女史が一緒するから」
 5月17日4時、千代田区如水会館14階、一橋クラブで7人がテーブルを囲んだ。

 幸い先輩の悲憤慷慨はおさまっていた。あれから小一ヶ月、時の経過に感謝した。
 だから「残念会」しばしで、話題はぼくのイギリス旅行に移る。

「きみの紀行文を帰りの電車で読もうと思っているのだがね」
 ありがたい催促だ。が、当の紀行文は挫折したままお蔵入りしかかっている(一昨年秋のイタリア旅行と同じ運命か)。
「実は、ですね……」
 と弁解がましく前置きして、旅行報告がはじまる。
 先月の4月中旬、10日間ほど妻と『英国周遊格安ツアー』を楽しんだこと、湖水地方のとろける景色、五つ星ホテル、のどかな田舎のたたずまい、各地の歴史遺産や宮城、それに……。ロンドンのロイヤル・フェスティバルホールでのコンサートは、とくに自慢たらしく強調した。
 で、紀行文については、先輩の渋面にひたすら恐縮しつつ、また、多少なりとも気にかけてくれていたことに感謝しつつ、
「強い後押しを頂きましたので、明日から心機一転、『英国紀行2004』にかかります」
 なんとかつじつまを合わせた。

 …………
 岩城女史、渡邊女史とは旧知の仲だ。国分浩一後輩は浦安のテニススクール仲間。四方田先輩とは初対面だが、メーリングリストで存じ上げている。
 中村先輩は奥野女史を招いていた。
 約束の4時少し前にクラブに入ると、お二人はすでに来席されていた。先輩はスコッチ・オンザロック、女史の前には先輩お奨めのケーキ「マロン・シャンテ」があった。

マロン・シャンテ

 ぼくの英国自慢話に全員飽きずつきあってくれたあと、話題は世界と近辺を駆けめぐる。気がつくと、窓越しに展開する皇居お堀端から新宿・池袋にかけてのパノラマは、夜のしじまに、あちこちネオンが輝いている。7時を過ぎていた。
 それまで、四方山話は行きつ戻りつ、それぞれが、吹き出し笑いしながらためになる。内容紹介はまたの機会、というよりも(打ち明けると)、その一つ一つがこれからのぼくの駄文に登場して、引き立て役となるだろう。いつものパターンだ。

「二次会、つきあってくれるね!」
 中村先輩に従って、パレスサイドビル地階、東京メトロ東西線「竹橋駅」直近の「竹はし」へ。ただし当店超満員。
 真向かいの江戸寿司「いろは」へ。ここも何度かお供したことがある。
 寿司と熱燗でさらに話が盛り上がる。
 お開きは9時を回っていた。

「いろは」にて

 梅雨明けの7月24日(土)を期して、次なる「集い」を企画することになった。
 『草生(む)しの鎌倉市"台"を訪ねる会
 
 JR大船駅近郊に閑静な丘陵地区があり、”台”(だい)という。先輩はその高台に邸宅をかまえ、何10年も住んでこられた。
 昨年秋、近くに高層マンションが新築されたのを機にその10階に引っ越された。当然ながら、こちらも眺望絶景。とくに富士山の姿が、ときどきの色彩で栄える。
 高台の邸宅は?
 どなたにお住まいいただくか、先輩は気をもんでおられた。購入されたのが奥野様で、
「本当によかったよ!」
 先輩は大満足だ。

1. マンション10階で富士山を見る。
2. 奥野様の高台邸宅でバーベキューパーティ
   (その前に庭の草むしり作業)

 詳細決まり次第、有志を募ることになる。
 翌日先輩から、FAXで、
「当日のイベントについて、改めて事前に、『作戦会議』を開催し、『綿密な準備』を行う」
 とのご指示を受けた。
  

小話集第27話〔商東戦残念会〕 おわり
(2004.05.22 記) 
朗読(08:38) on
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