夫婦で永平寺と那谷寺(なたでら)へ旅した。(2003.10.12-13)
 永平寺は父母の霊を分骨してある寺だ(曹洞宗吉祥山永平寺、福井県)。
 
 初日8時、ツアーバスは雨中新宿をスタート。東名、名神、北陸自動車道を経て、一路永平寺へ。
 昼過ぎから晴れ間も見えて、永平寺山門をくぐったときはまぶしいほどの秋晴れ。七堂伽藍を1時間半かけて参拝した。

 夜は『越(えつ)の本陣』で越前ガニを食す。

 2日目は明け方から激しい雨。楽しみにしていた東尋坊遊覧船は欠航となる。
 ご当所自慢の断崖絶壁と荒海見物自体も、降りしきる豪雨でままならず。スナップ写真数ショットで退散した。

 午後の那谷寺(なたでら)見物も雨の中(真言宗自生山那谷寺、石川県)。風は幾分凪いできている。
 那谷寺は雨がお似合いだ。そして秋のいまがいい。まだ紅葉ならず、しっとりと深山の墨絵模様である。
 故事来歴はあらためて調べるとして、本殿、三重塔がよかった。どちらも雨に引き立っていた。

 本殿横の奇態な岩壁。濃緑の森林に白い肌をさらけ出している。淡い霧のベールで、ひと際荘重な雰囲気をかもしていた。

 帰りの道すがら、芭蕉の句碑が目にとまった。
石山の石より白し秋の風』、"おくのほそ道"の一句だ。そのくだりを引用すると、

那谷寺
 山中(やまなか)の温泉(いでゆ)に行くほど、白根が嶽跡にみなしてあゆむ。左の山際に観音堂あり。花山(くわさん)の法皇三十三所の巡礼とげさせ給ひて後、大慈大悲の像を安置し給ひて、那谷(なた)と名付け給ふと也。那智・谷組(たにぐみ)の二字をわかち侍りしとぞ。奇石さまざまに、古松(こしょう)植えならべて、萱ぶきの小堂岩の上に造りかけて、殊勝の土地也。
石山の石より白し秋の風

 那谷寺をあとにすると雨が止んだ。天気も芭蕉の時雨忌(陰暦10月12日)を偲(しの)んでいたかのようだった。

小話集第21話〔永平寺と那谷寺〕 おわり
2003.10.14

朗読(04:13) on
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