暑い! 朝から30度を超えている。湿気ているから、ただでさえ汗が出る。
 「背広なんて」と思いながら、「やはりなあ」に屈した。
 昨日K君から受け取った和歌山県人会案内状に目を通す。一晩カバンに入れっぱなしになっていた。
2002年7月14日(日)
12:00 目??、八芳園、……

 "みくまのPC教室"のあと、はしゃいで飲み過ぎた。頭の芯が重い。あの場で虚(うつ)ろに揺らぐ文字を見ながら案内を確認した、つもりだった。

 10時過ぎ家を出る。東京駅で山手線池袋方面に乗り換える。
 目白駅着、11時15分。「早すぎたかな」
 道路向かい側のバス停へ行ってあわてた。
「目白は椿山荘ではないか! 八芳園じゃない」

 もどかしくカバンから案内状を出す。「八芳園は目黒だ!」
 二日酔いの頭がズキンと来た。
 急ぎ改札口を入りなおして再度山手線、目黒で地下鉄南北線に乗り換えて白金台へ。
 それでも八芳園の会場には12時1分前に着いた。「新宮市」テーブルでK君が手を振っている。

 県人会出席は今回が初めてだ。
 先日、故郷の友人たちで語らっていたとき、K君が、
「県人会で校歌を歌うことになってるんだよ。一緒に行ってもらえないかな」
 テニスをキャンセルして引き受けることにし、昨日のみくまのPC教室のあと、案内状を受け取ったのだった。

 その校歌合唱のこと。
 バイキングとアルコールがほどほどに一段落したころ、一校目が登壇した。ぼくたち新宮高校は2番目。あとは次々と10校近くだったか。和歌山工高のように20人以上の団体があると思えば、孤軍奮闘校もあり、いずれも熱唱に変わりはなかった。

 ぼくたち新宮高校は男5人、女2人。あらん限りの声張り上げる。

「♪♪日よ照り輝け晴れたり青空……♪♪」、
 1番で勢いがついた。K君が用意したカセットのカラオケ伴奏もすこぶるよい。
「♪♪緑よ輝け晴れたり千穂が峰……♪♪」、
 2番あたりから会場に目をやるゆとりが出た。見渡す限り身を乗り出して聴き入っている。
「♪♪潮よ輝け晴れたりわだつみ……♪♪」、
 3番は歌い手も他校の聴き手も酔っていた。会場が一つになっているように感じる。
 「♪♪……希望ははてなし若く清く とどろく波の穂その香も高し♪♪」
 最終小節まで、歌詞の一句一句を噛み締めながら歌った。
 予行演習なしにもかかわらず、7人のアンサンブルは最高だった。

 終わると会場は当然のようにどよめいた。拍手鳴り止まず、次の出番もわれを忘れたように惜しみないエールを送ってくれている。こんな誇らしい気分を味わったことがあろうか。二日酔いなど吹っ飛んでいた。

 テーブルに戻ると、7人の融和がまるで変わった。それまでも別に堅苦しい雰囲気ではなかったが、いまや百年の同胞だ。校歌がみんなの心を一つにしてしまった。

校歌合唱中
校歌合唱中
 県人会のあとは、K君の案内で赤坂のアメリカンクラブへ。男3人の語らいだ。
 ラウンジだけであき足らず、席を階下のレストランに変えてさらに話し込む。K君推薦のジューシー・ハンバーガーに舌鼓しながら、話題は際限なく広がる。在学中は両君とも見知らぬ相手だったが、やはり同期のよしみだ。
 新潟から参加のI君が腕時計に目をやり、ハッとした顔で「そろそろ……」
 3人とも話に浸りきっていた。
 アメリカンクラブを出るとすっかり暗い。一瞬ムッとくる蒸し暑さが、梅雨たけなわを実感させた。

小話集第12話〔和歌山県人会〕 おわり
2002.07.14
   

朗読(07:14) on
新宮高校校歌 on

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