4月6日(2002年)に東京目白の椿山荘で"みくまの会"があった。故郷新宮高校第11期(昭和34年卒業)の関東地区同期会だ。
 
 二次会のカラオケ会場でガヤガヤやっているとき、Yさんが
「インターネットはじめたんだけど、わからないこといっぱい。教えてくれない?」
 すかざずMさんとTさんが肯(うなず)きながら「ぜひ!」と追い討ち。周囲が聞き耳を立てる。小さなざわめきと同調の烽火(のろし)がこれに続く。
 とどめはK君。
「やってやれよ!」
 「中高年の元気!」を宣伝し、ビジネス用の名刺に「パソコン教室講師」などと書いているから、みなさんの信頼と期待は膨らんでしまっている。とりあえず「そうだね」と言わざるを得なくなった。
 …………

 前夜は亀戸で江東区役所主催の会合があった。それで遅くなったせいもあり、例によって寝付かれず明け方までラジオ深夜便の厄介になる。

 中央線高円寺駅で待ち合わせることになっている。11時20分着。最寄りの舞浜駅からちょうど1時間、意外と近かった。
 集合時刻までまだ30分ある。
《駅前でもぶらついて……》と改札口を出たら、まん前で女性2人が手を振った。
 9人集まってすし屋へ向かう。5月にしては肌寒い。どんよりの空は今にも泣き出しそうだ。

 にぎり寿司に舌鼓しながら、それぞれパソコンへの思惑≠述べあう。
 株、ショッピング、家計簿、アルバム整理、囲碁・将棋・麻雀、写真の加工・編集、絵入りの手紙、……。あるものだ。
 ぼくも少し披露した。

  • インターネット(ホームページ閲覧、調べもの、メール)
  • ホームページ作り 「中高年の元気!」
  • ゲーム
  • 年賀状や、なんらかの文書

 話がはずんでくると、各自の状況も判明する。かなりの使い手もいる。還暦記念に始めた女性、これからのもの、……さまざまである。悩み、難題もそれぞれ大いに抱えている。あれやこれやに話が飛び火して、時間を忘れた。
 今日はこんな感じでお役目御免か、と安堵が膨らみかけたところで、
「そろそろ行こうか!」 

 K君の会社は"環七"大和町陸橋近くで、茶色のシックな5階建ビルだ。音響関係の仕事をしている。
 CD製作の現場をひとわたり見学したあと、4階の会議室に入る。
 正面のスクリーンはすでにOHPの投影待機中である。社のどなたかが手早くぼくのノートパソコンをOHPにつないで、《あなたの出番ですよ!》と無言で促す。

 すし屋でのスナップ写真をパソコンに取り込んで「ミニみくまの会・ホームページ」をデモ制作することにした。思ったよりうまくいった。
 が、みんなの思いや期待を斟酌するゆとりのあろうはずはない。少なくとも"それぞれの悩み解決の場"にならなかったことは事実だ。
 だから、
 来月15日に「第1回みくまのパソコン教室」開催、ということに衆議一致したのである。

 K君の社長室で、コーヒーを頂きながらしばらく歓談した。5時過ぎてビルを出ると、暮れ方の街並みは本格的な五月雨(さみだれ)にむせんでいた。

  小話集第10話〔ミニみくまの会〕 おわり
2002.05.17

朗読(05:38) on
 
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